初回公開日:2021年1月1日
更新日:2021年1月31日
コーヒーの流行りの話をしていると何かと出てくる
「サードウェーブ」という単語。
「何となくこんな感じでしょ?」って知ったふりしていませんか。
実はこのコーヒーのトレンド「サードウェーブ」を理解することで、
これまでのヒトとコーヒーの付き合い方の歴史が見えてきます。
今回は、「サードウェーブコーヒー」についてお話します。
「サードウェーブ」直訳すれば「第3波」ですね。
もちろん「ファーストウェーブ」も「セカンドウェーブ」だってあります。
「サードウェーブ」は、
「ファーストウェーブ」、「セカンドウェーブ」を知ることで
さらにわかりやすくなります。
早速ですが、コーヒーの起源に遡りましょう。
ヒトがコーヒーと初めて出会った国はどこだと思いますか?
コーヒー豆が実る「コーヒーノキ」と出会い、
その利用が始まったのはアラビカ種の原産地である
「エチオピア」からだと言われています。
コーヒー豆の品種については以下の記事で説明しています。
→コーヒー豆の2大品種。「アラビカ」と「ロブスタ」の違いについて
種子や葉をお茶のようにして飲んだり、果肉を調理して食べたり、
薬にしたり、贈り物にしていたりと
既にヒトの生活の中でコーヒーは大切な役割を持っていました。
その後コーヒーは歴史と絡み合いながら、陸、海を渡って
全世界へと徐々に広がっていきます。
コーヒーが今の形のように飲用として広まった15世紀のことです。
世界中にコーヒーが広まるにつれ、コーヒー豆の需要も増え、
商用の農産物として人為的な栽培も次第に増えていきます。
「ファーストウェーブ(第1波)」は
コーヒーの起源ではありません。
ここからさらに約500年後。
大量生産+大量消費
一大産業化へ…
1938年「インスタントコーヒー」の開発から始まり、
コーヒーがより身近な飲料として家庭に入り込んだ時代が
「ファーストウェーブ」とされています。
開発当初は「怠けものが楽をするためのコーヒー」というイメージから、
浸透しにくかったインスタントコーヒー。
メーカーの努力による品質の向上と、巧みなイメージ戦略により、
人々の生活へインスタントコーヒーは
まさに溶け込んでいきます。
「コーヒーブレイク」という言葉が作られ、
1962年には「国際コーヒー協定」が結ばれます。
生産国からアメリカを含む消費国へコーヒーが
安定供給されるようになりました。
1930年代~1960年代まで続く「ファーストウェーブ」は、
飲用コーヒーの大量生産と大量消費、コーヒーを飲むという行為が
より生活に密着し、カジュアルになった時代でした。
コーヒーチェンの隆盛。深入り+ラテの時代
大企業主義の大量消費から、小さな店舗でカウンター越しに
コーヒーを提供するカフェに注目が集まります。
1960年代半ば、
カリフォルニア・バークレーに誕生したコーヒー店
「Peet’s Coffee and Tea(ピーツ・コーヒー&ティー)」
に触れずに、セカンドウェーブの話はできません。
アメリカ西海岸、カリフォルニアはバークレーに誕生した
このコーヒーショップでは、
オランダで幼少期を過ごしたアルフレッド・ピート氏が
アメリカでもかなり早い時期から、
店内焙煎したコーヒーの販売や、深煎りのアラビカコーヒーを
提供していました。
このコーヒー店に影響を受けた3人の若者が、
1971年にシアトルで開業したのが
「スターバックス」であったという話もあります。
「セカンドウェーブ」は、
アメリカ西海岸からのトレンド発信を中心とした、
今や街中でよく見かけるコーヒーチェーン急成長の時代でした。
このセカンドウェーブのさなか、
「サードウェーブ」の土台となる
「スペシャルティコーヒー」という概念が生まれます。
―Seed to Cup-
口にしているコーヒーの過去と今、未来を深く知り
コーヒーとより丁寧に向き合う時代
1978年、アメリカの「Knutsen Coffee(クヌッセン・コーヒー)」社の
「Erna Knutsen(エルナ・クヌッセン)」氏が
フランスのコーヒー国際会議で、
次のように表現したのが
「スペシャルティコーヒーのはじまり」
とされています。
Special geographic microclimates produce beans with unique flavor profile.
「特別な気象・地理的条件が、特異な香味を持ったコーヒー豆を育てる。」
Erna Knutsen
スペシャルティコーヒーの概念・定義については、また別のお話で…
→「スペシャルティコーヒー」とは?普通と何が違うの?
コーヒーの【おいしさ】を豆から見つめなおす
という「スペシャルティコーヒー」の
概念をベースに生み出された流行が
「サードウェーブ」です。
「From Seed to Cup」と表現され、
生産地で育ち、収穫される豆から一杯のコーヒーになるまでの
生産工程のこだわりと透明化。
また、深めの焙煎やミルクと合わせて飲むといっ
これまでのトレンドとは異なり、
農産物であるコーヒー豆本来が持つ特徴的な香味を
焙煎と様々な抽出方法によって引き出すという考え方が
「サードウェーブ」の根底にあります。
サードウェーブ系コーヒーにおいて
浅煎り系のコーヒーが好まれるのは、
この「元は農産物(果実)であるコーヒー」の
素材の美味しさを活かすという考え方があるからです。
1999年には
「Cup of Excellence(カップ・オブ・エクセレンス)」
というスペシャルティコーヒーの品評会が始まります。
この品評会で限られた国際審査員に高い評価をうけたコーヒー豆は、
審査結果とともにインターネットオークションにかけられ、
最高値の応札者に販売されます。
たまに町の焙煎所でも「COE2020受賞ロット」という
コーヒー豆を見かけることがあります。
数字は入賞年度を示します。
ぜひ一度お試しください。
2015年に清澄白河に国外初店舗として出店した
ブルーボトルコーヒーの登場によって、
日本国内でも「サードウェーブ」という言葉の認知度が
コーヒーに詳しくない一般の人にも徐々に浸透していきましたが、
それまでに2003年の「日本スペシャルティ協会(SCAJ)」設立や
スペシャルティコーヒーを扱うコーヒーショップのオープン・日本上陸など
コーヒー好きな人は、まさにトレンドの波を感じていたのではないでしょうか。
これまで「サードウェーブ」についてお話してきましたが、
日本に輸入された「スペシャルティ」という考え方、
素材の味わいや作る所作をも大切にする日本古来の考え方に
どこか親和性があると思わざるを得ません。
「サードウェーブ」コーヒーは
新たなコーヒーの楽しみ方を提案してくれています。
この波、乗ってみませんか?
~まずはコーヒ―。考えごとはその後で~
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