初回公開日:2021年2月28日
更新日:2021年2月28日
おうちでエスプレッソのような濃いコーヒーを飲むためには、それ相応の器具が必要です。美味しいエスプレッソは10気圧前後の圧力をかけて濃厚なコーヒーを抽出します。表面にできるクレマという泡状の層が美味しさです。クレマのあるエスプレッソというわけではありませんが、ここでは同じく圧力を活用して濃いコーヒーを抽出することができるモカポットについてご紹介します。
日本の一般家庭ではまだあまり見かけないこの器具はモカポット、マネキッタ、または直台式エスプレッソと呼ばれます。ヨーロッパの家庭では広く普及しており、イタリアでは一家に1台“以上”あると言われているくらいです。材質、デザイン、カラー、サイズも様々です。小さなサイズ感がとってもかわいい、このコーヒー器具ですが、「マネキッタ」という言葉の語源は、ラテン語で「小さなエスプレッソマシン」からきているそうです。おうちのインテリアとしてもワンポイントになること間違いなし。この記事を読んで購入を検討されている方は、ぜひ価格だけで決めずに、機能性、デザインも吟味し、お気に入りの一台を見つけてみてくださいね。以下、この記事では統一して「モカポット」と記載します。
モカポットの抽出原理は、エスプレッソマシンと同じく、「透過抽出」と「加圧ろ過」です。ドリップ抽出のように、コーヒー豆にお湯を通すことにより、コーヒー豆中の成分がお湯に移行します。いわゆる固定相から移動相へ成分が移行します。クロマトグラフィー分析と同様の原理です。ここでドリップ抽出と異なるのは、加圧していることです。ドリップ抽出の際にかかる力は重力です。長くなりそうなので、これはまたドリップ抽出の原理でご説明します。モカポットや、エスプレッソマシンは圧力をかけることにより、お湯を高圧、高速でコーヒー豆の中を通し、コーヒー豆内の成分をより高濃度で分離しています。こちらはHPLC(ハイパフォーマンス・リキッド・クロマトグラフィー)の原理です。
モカポットの構造は下図のようになっています。
モカポットは、下から直火で熱を与えることによって、ボイラー部の水を沸騰させます。するとボイラー部には蒸気圧が発生し、中の沸騰した水を上部のフィルターバスケット部に押し上げます。フィルターバスケット部にはあらかじめ細かく挽いたコーヒー豆が詰められており、そこをお湯が通ることで、コーヒー豆中の成分がお湯に移行し、本体ポット部にコーヒー成分が溶け出した溶液(普段飲んでいるコーヒー)が溜まるという構造です。下の画像のように円筒状の突起物からコーヒーが勢いよくできます。
他の抽出原理については過去の記事を読んでみてくださいね。
→使い分けたい5つのコーヒー抽出方法
こんなに手軽に家庭で加圧ろ過を原理としたコーヒー抽出ができるのに、なぜ数万から数十万円もするエスプレッソマシンのエスプレッソが存在するのか。エスプレッソ好きな人のほとんどの人は、おそらくモカポットでいれたコーヒーを飲んでも、それを「エスプレッソ」と同じとは言わないのではないでしょうか。抽出原理が一緒なのに、味に違いが生じる理由は、モカポットとエスプレッソマシンの大きな違い、「圧力」に関係しています。
エスプレッソマシンは10気圧前後での抽出が一般的です。この気圧で抽出することにより、「クレマ」と呼ばれる泡状の層が生じます。これが、「エスプレッソの特徴であり、美味しさ」です。
一方のモカポットは、抽出に用いられる蒸気圧は1.5~2気圧です。明らかに気圧不足です。これではエスプレッソの醍醐味であるクレマはほとんど立ちません。また、クロマトグラフィーの移相効率(濃縮効果)は、高圧化、高速化により高まることをお話ししました。おそらくモカポットの溶液中のコーヒー成分の濃縮率は、エスプレッソと比べると低いと考えられます。
考え方次第ではあるのですが、美味しいエスプレッソはお店のプロにお任せしませんか?ただ、毎日はカフェに行けない、手軽におうちで楽しみたいというときには、モカポットがきっとあなたの心を満たしてくれるはずです。そして、おうちにモカポットを飾るだけでもかわいい!
これだけモカポットがヨーロッパ、とくにイタリアで愛されるのは、おそらくその発祥に理由があるのかもしれません。
モカポットの原型は1820年にフランス人のベイ・ベルナール・ラボーによって考えられ、1933年にビアレッティ社(アルフォンソ・ビアレッティ)により特許取得がなされ、「モカエキスプレス」という商品名で発売されました。この器具の構造は、当時使われていた「洗濯窯」から着想を得たとか。大きな容器にパイプが差し込まれた「Liscivuese」という名称で、下に水、洗濯物と洗剤を入れ、その容器ごと火にかけ、沸騰寸前のお湯が中央のパイプを通って上昇し、洗濯物に降りかかるという構造だったそうです。まさに構造は今と同じ!
日本には1970年代に「直台式エスプレッソ」として紹介され、広がり始めました。ちなみに「モカエキスプレス」の「モカ」はイエメン・モカとは関係ないそうです。
モカエキスプレスについてもっと知りたいなら、ビアレッティの公式Webサイトがお勧めです。Bialetti 公式ホームページ→https://bialetti.jp/
モカポットの使い方については、お持ちの製品の説明を必ずお読みください。
ここでは、例としてBIALETTI VENUS(ヴィーナス)の使い方を簡単にご紹介します。
ちなみにヴィーナスを選んだ理由は、ステンレス製で耐久性と手入れがしやすいためです。少しデザイン的にシンプルな気もしますが、洗練されたデザインとも言えます。
【事前準備】
①本体をひねり、ポット部と下部タンク(ボイラー部)を分けます。
②ボイラー部の上についているフィルターバスケットを取り外します。
③ボイラー部に水を入れます。安全弁(写真の突起)の下まで入れてください。
④フィルターバスケットをセットし、コーヒーの粉を入れます。押さえつけずにすりきり一杯分です。フィルターバスケットの周りについている微粉は取り除きましょう。ボイラー部とポット部のかみ合わせが悪くなります。
⑤ポット部を取り付け、きつく締めます。初めての時は締め方が甘く、うまく抽出できないことがありました。しっかり締めてくださいね。その後、火にかけるのですが、ガス台の上に安定して置けない場合は画像左のようなサポートリングを併用してください。
⑥ボイラー部そこから火が漏れない程度の火力で5分ほど待つ(水温、外気温によります)と、シューシュー、コポコポと音がし始め、ポット部中心の管からコーヒーが抽出されます。
⑦お気に入りのカップに注いで出来上がりです。使用直後は本体がとても熱くなっているため、火傷には気を付けてくださいね。
いかがでしょうか。今回はモカポットの構造から、歴史、使い方までをご紹介しました。モカポットで抽出したコーヒーを使ってカフェラテを作ってみるの良いかもしれません。お店と同じとはいきませんが、十分に楽しめると思いますよ。ぜひおうち時間をモカポットでもっと素敵な時間にしてみてください。
~まずはコーヒ―。考えごとはその後で~
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